COLUMN

暮らしのコラム

サザエさんの間取り

2021.12.17

マンガ間取り

国民的ホーム漫画の代表作であるサザエさんの家。
原作漫画のサザエさんは、昭和21年に福岡の地方新聞で連載が始まりました。テレビ漫画のスタートが昭和44年ですから、まさに日本の住宅業界は好景気の時期といえます。

改めて見ると、現代の間隔では三世代2家族の住まいにしては小さいと感じます。でもこの小さな住まいは日本の生活の知恵がぎっしりと詰まっています。一般的にいう「田の字型プラン」の間取りですし、和室が多いことも特徴です。田の字型プランは必要に応じて部屋の大きさを変えることができます。和室は部屋の使い勝手を固定化しません。

つまり、日本人は「室」という空間の仕切り方ではなく「間」という仕切り方で住まいを構成してきました。これは、それぞれの空間を必要に応じて使い分けできるという、小さい住まいでも使える日本人の知恵なのです。でも、逆にプライバシーは確保しにくい住環境ともいえます。

提供:会援隊 http://kai-en-tai.com/

このサザエさんの家は、昭和20年当時もっとも一般的な間取りでした。
家長(波平さん)の寝室と客間を日当たりのよい南側に配置し、個室や団らんの場である車の間を北側に配置。トイレはくみ取り式が一般的だったので、住まいの一番奥に配置しています。広縁は別名「表廊下」とも言い、お客様専用の通路として利用していました。

ここで注目したいのが、サザエさんの部屋の位置です。所帯が別というのは言い換えれば別の家族です。磯野家とフグ田家を廊下を使って絶妙な距離感で分離しています。
さらに、もう一つの子供たちの部屋にも注目です。テレビでは広そうですが、実は4畳半をふたりで使っていたのです。さすがにこの狭さだと部屋にこもりにくいですね。さらに、茶の間の側というのも家族とのコミュニケーションを活発にする要因なのかもしれません。玄関から「ただいま」の声が届きやすい場所に茶の間(団らんの場)があることも楽しく暮らすためには重要なのかもしれません。

この当時の間取りは、家族のプライバシーを確実に確保することは難しいのですが、家族の和とか絆といった本来家族に大切なことが自然と育める工夫があるのかもしれません。それは、他人への気遣いとか思いやり、開けられるけど勝手に開けないドアなど、大人の社会に巣立っていくための子供たちへの「躾」も同時に行える環境でした。そのような住文化を育める間取りこそ、家族崩壊の危機といわれる現代に必要な環境なのかもしれませんね。